会社・事業の買収を検討しており、M&Aのプロセスと各留意点についてお知りになられたい方のために、弊社が提供しておりますM&Aアドバイザリーサービスをプロセス順にご説明いたします。
STEP01-【ご相談】
<お問い合わせ>
まずはクラリス・キャピタルのホームページ、お問い合わせページからお問い合わせください。
<ご面談>
ご面談にて、弊社のご紹介をさせていただき、買収側様の会社概要、M&Aをされたい意図・戦略、買収のターゲットとされるご希望内容、M&Aのための資金計画等についてお伺いし、買収側様への理解を深めます。
買収側様への理解を深めてよりマッチする案件のご紹介ができるように、「会社HPをみてもらえればわかる」ではなく、買収側様から事業の概要などをご説明いただいたほうが有難く存じます。
<ノンネームシートによる案件のご紹介>
「ご面談」でいただいたご希望にマッチしそうなM&A案件(売り案件)がございましたら、ご紹介させていただきます。
ただし、売却側様に買収側様(お客様)へのご紹介の承諾を得られた場合のご紹介となります。
これは、買収側様と売却側様の間で、事業上の取引関係などがあり、ご紹介した場合、売却側様の営業に支障が出ることがあるため、ノンネームシート(対象会社様を明示していない案件概要書)での情報提供の段階でも、弊社では売却側様にご紹介する買収候補側様についてご紹介の可否をご確認いただいております。
(売却側様と関係が深い買収側様ですと、ノンネームシートでも対象会社様を特定できることがあるため)
このようなプロセスを経るため、「ご面談」の段階でマッチしそうなM&A案件(売り案件)がございましても、基本的には「ご面談」での案件のご紹介はなく、こちらの段階でのご紹介となります。
また、売却側様の承諾が必要になるため、ご興味をお持ちいただいた弊社のM&A案件(売り案件)がございましても、必ずご紹介できるわけではございませんので、ご了承いただけますと幸いです。
STEP02-【正式ご依頼】
買収候補側様にノンネームシートでご興味をお持ちいただき、よりご検討を具体的に進めていただく場合、弊社と秘密保持契約・ファイナンシャルアドバイザリー契約を締結の上、詳細の開示をさせていただきます。
その後、トップ面談や意向表明書提出などM&Aの具体的な流れへと進んでまいります。
<ファイナンシャルアドバイザリー契約>
会社・事業買収のファイナンシャルアドバイザリーを弊社にご依頼いただくことになった場合、お客様と弊社の間でファイナンシャルアドバイザリー契約書(以下、「FA契約書」)を締結いたします。
FA契約書には、弊社の提供サービスの内容や料金体系等が規定されています。
クラリス・キャピタルでは基本的に「専任」でファイナンシャルアドバイザリーのご依頼を受けさせて頂いております。
※「一般」でのご依頼はお断りさせていただくことがあります。「一般」の場合には、成功報酬料金が通常より高くなります(詳細は料金体系をご覧下さいませ)。
<専任契約とは>
「専任契約」とは弊社のみにファイナンシャルアドバイザリーをご依頼いただく、つまり他のM&A仲介・アドバイザリー会社にご依頼いただけない契約です。
ただし弊社では、お客様が自ら見つけてこられた売却側様については、弊社を介して、M&Aを進めないといけないことまでは、縛っておりません。そのため、お客様が自ら見つけてこられた売却側様と直接交渉して、契約を締結することも可能です。
M&Aはクロージングするまで期間がかかるものでございますので(クラリス・キャピタルのブログ記事「M&A クロージングまでの期間」をご参照ください、基本的に6か月~1年の契約期間をいただいております。
<一般契約とは>
「一般契約」とは、他のM&A仲介会社にもご依頼いただける契約形態です。「一般契約」には下記のメリットとデメリットがございます。
メリット
・お相手探索において幅広い可能性を追求できる
デメリット
・それぞれのM&A仲介会社とのやりとりの手間がかかる
・情報の管理が難しい
・秘密情報が流出しやすくなる
STEP03-【お相手候補とのトップ面談】
トップ面談とは売却側、買収候補側様のトップ同士の面談を指します。トップ面談をどの段階で行うかについて決まりはありません。
<トップ面談のタイミング>
必要であれば、随時行われますが、通常は、買収候補側が案件資料等を検討し、ある程度、売却側のことがわかり、意向表明書を提出前に確認の意味などで買収候補側からの要望をもって行われます。
<トップ面談の目的>
トップ面談の目的はお互い会社や人物について理解を深めること、ビジネス等について理解を深めたり、疑問点を解消することにあります。
売却側にとっては、買収候補側は本件のどこに興味をもったのか、M&A後の運営をどう考えているのか、どういった経営方針をお持ちか、信頼のできるお相手か、買収資金に問題のないお相手か等を確認する場となります。
質疑応答などはトップ面談によらなくても、M&Aアドバイザーを介して確認することは可能であるので、トップ面談をわざわざ行う意味は双方様が顔をあわせるというFace to Faceの効力、ソフト面・定性的側面にあるといえます。
つまり、トップ面談はお相手にとっての印象付けの機会、一つのプレゼンの場でもあります。
<自己紹介>
そのため、売却側は、もう当社資料は十分みているだろうから、いまさら自己紹介は必要ないでしょう、ではなく、自らの言葉で、自らの歩みや自社の事業についてきちんと紹介するのがよいでしょう。
<アピール方法>
トップ面談はプレゼンの場、自己表現の場でもあるため、時と場合、お相手に応じて、買収候補側がアピールの一環として下記のようなことをやることもあります。
・自社地域の銘菓などをお土産としてもっていく。
・自社商品・製品をプレゼントする。
・提案・プレゼン資料などを用意する。
<トップ面談の流れ>
トップ面談の通常の流れは
1.双方様の自己紹介
2.質疑応答
であり、所要時間は1時間程度です。
技術系の会社様が売却側の場合には、トップ面談に追加して、製品やシステムのデモを見学することもありますし、製造業の会社様が売却側なら工場見学、有店舗型ビジネスであれば、その見学を同日に行うこともあります。
<出席者>
出席者は売却側の売主、買収候補側は経営陣や経営企画部の担当者などで、議事進行はM&Aアドバイザーが行います。
<トップ面談の場所>
トップ面談の場所は売却側の会社や事業所の雰囲気などを見てもらうために、売却側の会社で行うこともありますが、事務所の構造上、声がもれるなどの支障がある場合(「従業員にいつM&Aのことを話すか」で書いたように、通常、この段階でM&Aについて従業員は知りません)には買収候補側やアドバイザーのオフィスで行うこともあります。
<現地見学における留意点>
売却側の営業拠点の現地見学が行われる場合には売却側から現場スタッフに「同業者の見学」や「これから依頼するかもしれない経営コンサルタントによる見学」など別の違和感のない見学理由を説明します。
そこで、買収候補側はそのように振る舞うよう、お願いいたします。
STEP04-【意向表明書の提出】
<意向表明書とは>
・LOI(読み方「エルオーアイ」。Letter of Intentの略)と呼ばれ、買収側が売却側に対し意向(主に条件等について。ハイライトは譲受価格)を表明する文書を指します。
・会社としての正式な意向表明であるということで、通常、買収法人側の代表印を捺印します。
・あくまで意向であるため、買収側は表明した意向内容を守らないといけないというものではありません。その後も条件等が交渉され、変更されます。よって、法的拘束力がない旨が通常、記載されます。
・必ず提出しないといけないという決まりはありません。
<提出タイミング>
意向表明書を提出する際、そのタイミングはいつなのか記載します。
①基本合意書を交わす前の段階(売却側がどこと交渉するかを判断するため)
②買収監査後(買収監査の結果を受けての最終意向表明書として提出します。この提出はケースバイケースで出さないことが多いです。)
M&Aアドバイザーを間に入れずに、相対で案件を進めていらっしゃる場合などは、口頭などで条件を伝え、意向表明書なしで進める場合もあります。
しかし、その時点での意向を双方がしっかりと確かめられるようなプロセスを経たほうが良いでしょう。
<提出にあたっての注意事項>
意向表明書を提出する際に注意すべき点として、以下例示いたします。
①提出期限は厳守、ただし提出タイミングはギリギリに
提出期限が定められている場合には、ビジネスマナーとして期限内に出しましょう。
ただしライバルがいる場合には、自社の意向表明が他者に漏れ、それよりも高価格を入れられるという可能性もあることを鑑みると、提出期限当日に出すのが望ましいです。
②意向表明書提出前のプロセスも大事に
特に日本の場合は、売却側が意向表明の条件・金額等だけでなく、他の要素も含めて総合的に判断することが多いといえます。
意向表明前の面談などで、会社・代表などの印象・姿勢・考え方・相性なども見られていますので、意向表明書提出前のプロセスなども大事にする必要があります。
③アピールしたいことがあれば意向表明書に盛り込むのも効果的
条件・金額も大事ですが、それ以外の熱い想いや、取引後の具体的運営プラン、自社についてのアピールなどあれば、意向表明書のフォームが指定されている場合でも、それに追加してメッセージやプレゼンテーションを盛り込んでアピールすることも効果的です。
④価格の提示は慎重に
買収監査の後で何らかの理由をつけ、価格を買収側の希望まで下げようという糸で、独占交渉権を得るために、その気もないような高価格を意向表明書で提出するのは、たとえ独占交渉権を獲得したとしても、売却側との信頼関係を壊し、ブレイクしかねません。
そのため、その時点で知りうる情報を検討した結果の誠実な価格を提示するのが良いと考えます。
また、価格の提示をレンジで表示する場合、幅を広めに出しすぎるのも、同様の理由でお相手から不信感をかう可能性がありますので、可能な限り狭めたほうが良いといえます。
⑤ドラフトをM&Aアドバイザーにみてもらう
正式提出前にドラフトをM&Aアドバイザーにみてもらい、意見を聞くのが良いでしょう。
漏れなどがないかの基礎的な確認と、内容についてアドバイスをもらいます。
M&Aアドバイザーはいくつも意向表明書をみておりますし、売却側のキャラクターなどから、このような書き方の方がお相手に響くといったアドバイスをしてくれるので、参考にするのが良いといえます。
STEP05-【基本合意の締結】
意向表明書の提出の次の段階として、基本合意書を提出し、基本合意を締結します。
<基本合意書とは>
・MOU(読み方「エムオーユー」。Memorandum of Understandingの略)と呼ばれ、買収側と売却側がそれまでの合意した条件等を確認するための書面を指します。
・一般的には、売却側が意向表明書から買収側を1社選択した後に、その買収側と基本合意書を交わします。
・必ず提出しないといけないという決まりはありません。
<提出タイミング>
意向表明後、買収監査前のタイミングに基本合意書を交わします。
実務上、こちらを交わすのは当事者様のお考えやスケジュールなどによってケースバイケースです。
また買収監査に複数社の買収候補側が進み、買収監査の結果をもって、第二次入札(最終意向表明の提出)があるような場合も、基本合意書は基本的に交わしません。
<基本合意書を交わす意味>
・それまでおおよそ合意した条件を盛り込み、双方が確認できます。
・買収監査後の交渉の基礎になります。
・通常、独占交渉権が買収側に付与されます。
<買収側におけるメリット>
独占交渉権を獲得できます。買収監査で専門家費用等も発生するため、途中で他社と交渉されブレイクすると、そのコストが無駄になってしまいますが、その可能性を払拭することができます。
<基本合意書と適時開示>
意向表明書の後に交わす(ケースが多い)基本合意書ですが、この当事者に上場会社が入る場合には、多くの場合には上場企業のご意向で基本合意書を交わしません。
なぜなら基本合意書を交わすことで、上場会社はこれについて適時開示をしないといけないことが懸念されるからです。
適時開示は会社法などで定められたものではなく、証券取引所が上場会社に義務付けている「重要な会社情報の開示」です。
基本合意書の取り交わしが適時開示義務に該当するかどうかですが(上場会社にとって小規模な重要性がないと思われる案件であれば該当しないのか、基本合意書の文面で法的拘束力がない旨や必要な意思決定機関の意思決定を経たものではないとことを明記すれば適時開示にあたらないのか等の視点から)、規模がどうであれ、書面の文言がどうであれ、基本合意書を交わしたら、適時開示はデフォルトとして考える、というのが、上場会社が当事者にいるときのM&A現場での判断であるように感じます。
基本合意書を交わしたことについての適時開示を避けたいのは、適時開示によりその案件の存在や当事者が広く世間に知れわたることを避けたいためです。
いずれクロージングすれば、そのときの適時開示により世にでることですが、基本合意を交わしたような段階では、その後ブレイクすることも十分ありうることで、不確定な状況の情報をだしたくないという理由もあるでしょう。
また、適時開示によって、当該案件へ外部からの影響・反応がでてくることも考えられ、これがその後、話を進めるのに障害になることも懸念されます。
そのため、上場会社が当事者にいる場合には、上場会社の判断により、基本合意は交わさないことがほとんどです。
<基本合意請書>
上述した通り、上場会社が当事者にいる場合には、基本合意は交わさないことが通例です。
しかし基本合意書を交わさない時、買収候補側は、基本合意書を交わす最大のメリット、つまり独占交渉権を得ることができなくなってしまいます。その際に登場するのが「基本合意請書」です。
<基本合意請書とは>
・売却側が、独占交渉付与先が決まった買収候補側へお渡しする書面を指します。
・基本合意書と同様に、法的拘束力はございません
※このような意向表明請書の提出や受取が上場会社において適時開示義務にあたらないことをクラリス・キャピタルが保証するものではございませんので、皆様の責任とご判断で行っていただきますようお願いいたします。
STEP06-【買収監査】
買収監査(デュー・ディリジェンス。頭文字をとって、「DD」と呼びます。)は、買収側が最終の条件を提示することを目的に、お相手先を詳細に調査するために行うものです。各専門家に依頼した場合、その費用は買収側が負担します。
<調査ポイント>
・会計監査
簿外債務の有無、資産の実在性・評価について調査します。
・税務監査
税務上のリスク(滞納、過去の処理による追徴課税のリスク等)について調査します。
・ビジネス監査
対象会社の強みと弱み、業界におけるポジションについて調査します。
・法務監査
不利な契約書の存在、労働問題、係争関係について調査します。
・環境監査
周辺への環境汚染の有無、適切な環境対応がなされているか等について調査します。
あくまで一般的なものについて挙げさせていただいたので、それ以外の調査を必要に応じて行うことがあります。
また、列記させていただいたような調査を全て実施するわけではなく、案件の規模や、その案件においてのリスクの高い事項、または自社対応可能かどうか、専門家コストなど総合的に判断した上で、必要な買収監査を行います。
<買収監査における留意点>
買収監査において買収側が特に留意すべきだと思われるポイントについてみていきましょう。
①専門家との十分な情報共有
外部の専門家を起用する場合には、事前にその専門家に案件についての説明を行い、どのような買収監査の方針でいくか、買収サイドとしてどのようなところにリスクを感じているかなどの綿密な打ち合わせを行います。
事前に打ち合わせることで、買収側による定性的な情報等(トップ面談における対象階差経営陣の印象など)も共有するなどし、買収監査がより効率的・効果的なものになります。
②会計監査と税務監査は別
会計監査と税務監査は同じものではありません。調査する視点が異なりますので、専門家に依頼するときにはどちらを依頼しているのか、それとも両方か、明確にしたうえで依頼します。税務監査が会計監査に含まれていると思い込んでおり、出てきたレポートには必要な税務監査に関するものがなかったということがないようにします。
③対象会社の従業員に対する対応
通常、この段階において、売却側(オーナー社長など)はM&Aについて従業員の方に話しておらず、内密に進めています(「従業員にいつM&Aのことを話すか」ご参照)。
しかし、買収監査を対象会社にて行う場合には、対象会社の従業員に資料を用意してもらったり、写しをとっていただいたり、インタビューを受けてもらうなどの協力をしてもらうことがほとんどです。
そのため、買収監査であることは伏せて、別の他の理由で来たことにする必要があります。
例えば経営コンサルティングのための対象会社把握調査などの名目を決めて、売却側・専門家と共通の認識と対応をするようにします。
細かいことですが、対象会社の受付では買収側などの社名を名乗るか否か、名刺の授受をどうするか等、売却側とも事前に相談・確認しておき、買収監査をするメンバーで認識を徹底しておきます。
対象会社にて買収監査を行うことに支障がある場合には、対象会社とは別の場所にデータルームを設けて、従業員へのインタビューは行わない、という対応を検討します。
④対象会社(売却側への配慮)
買収監査は対象会社を非難・攻撃する場ではありません。対象会社は通常の業務でお忙しい中、資料の用意や、インタビューなどの対応をしてくださっています。
信頼関係を崩さないように、言葉遣いなど対象会社への配慮を怠らないことが重要です。
中には、お仕事を遂行する気持ちが強すぎるのか、対象会社へ詰問口調になり、お相手の気分を害してしまう方がいらっしゃいます。
買収監査を行う専門家の方などに対象会社への配慮を事前に確認する、またはそのような場面に遭遇したときには、その後、気を付けていただくように伝えます。
STEP07-【最終契約締結・クロージング】
買収監査までの作業が終了し、意思決定機関(取締役会や株主総会)における承認を得、買収側と売却側双方のM&A実行意思がある場合、最終契約を締結します。
その後、代金決済などを完了し、一連のお取引が終了致します。